裁判になっていないので赤本基準の8割?   弁護士 小林 塁

保険会社と交渉していると,たびたび,保険会社から「裁判外の交渉の段階なので,赤本基準(これについては別のコラムを書かせて頂きました)の8割が妥当です」という主張をされることがあります。

この主張の根拠がどういった所にあるのかはっきりとはしませんが,「赤本基準の賠償額は裁判をして始めて認められるものである」,あるいは「裁判をするほど手間がかかっていないのだから,8割で勘弁してよ」というのが本音なのかもしれません。

しかし,裁判は,あくまでも,既に存在している損害を確認し,その支払いを命じるのであって,裁判を通して初めて損害が発生するわけではありません。裁判をする以前においても,既に赤本基準の損害は発生しているわけです。

分かりやすく例えれば,AさんがBさんに100万円貸したとして,Aさんが返済期日になったのでBさんに100万円返してよいったとしましょう。このとき,Bさんが裁判してないのだから80万円が妥当だといったとしたら,この言い分がおかしいのは明らかでしょう。AさんのBさんに対する100万円の返還請求権は,裁判をするしないに関わらず,既に存在しているものだからです。

ですので,我々としては,もちろん他の様々な事情を考慮してではありますが,保険会社が単純に「8割が妥当だ」と主張してきた場合には,そうではありませんと答え,交渉していくわけです。

投稿者プロフィール

江畑  博之
江畑  博之
昭和56年新潟県燕市生まれ。平成14年新潟大学工学部化学システム工学科へ入学。卒業後、平成18年東北大学法科大学院入学する。司法試験に合格後は最高裁判所司法研修所へ入所し弁護士登録後、当事務所へ入所する。交通事故被害者が適切な賠償額を得られるよう日々、尽力している。
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昭和56年新潟県燕市生まれ。平成14年新潟大学工学部化学システム工学科へ入学。卒業後、平成18年東北大学法科大学院入学する。司法試験に合格後は最高裁判所司法研修所へ入所し弁護士登録後、当事務所へ入所する。交通事故被害者が適切な賠償額を得られるよう日々、尽力している。
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