①脳外傷による後遺障害 ~遷延性意識障害と高次脳機能障害~

交通事故による脳外傷の重症事案

昨今、飲酒運転の厳罰化や自動車の安全性能向上などにより、交通事故発生数は、全体で減少傾向にあるといわれています。

しかしながら、不幸にも、交通事故によって脳に外傷を受け、重篤な後遺障害を負われる方は後を絶ちません。

交通事故による重篤な脳外傷の典型例としては、遷延性意識障害高次脳機能障害が挙げられます。 

遷延性意識障害とは

遷延性意識障害とは、一般的に植物状態と呼ばれている状態です。日本脳神経外科学会によると、以下の6条件にあてはまる状態が3か月以上継続して見られた場合を「遷延性意識障害」と呼んでいます。
① 自力移動ができない。
② 自力摂食ができない。
③ 屎尿失禁をしてしまう。
④ 眼球は動いても、認識はできない。
⑤ 「目を開け」「手を握れ」などの簡単な命令には応ずることもあるが、それ以上の意思疎通はできない。
⑥ 声を出しても意味のある発語ができない。

遷延性意識障害は、大脳の大部分が損傷することによって発症するといわれています。

しかし、遷延性意識障害は、生命維持に必要な脳幹等の脳の中枢機能は正常に機能している状態であり、脳の中枢機能が損傷している脳死状態とは異なります。

したがって、脳死状態が意識の回復を見込めない状態であるのに対し、遷延性意識障害では、意識が回復した事例も多数報告されているようです。

 

高次脳機能障害とは

高次脳機能障害とは、交通事故損害賠償実務においては、「事故により脳外傷が発生した被害者について、その回復過程において生じる認知障害や人格変性等の症状が、外傷の治療後も残存し、就労や生活が制限され、時に社会復帰が困難となる障害を総称するもの」とされています。

したがって、高次脳機能障害といってもその症状は多岐にわたり、常時全面的に介護が必要な方や、一人で外出ができないような重篤な症状の方から、就労を維持できるが作業効率などに問題があるといった比較的軽微な症状の方までいらっしゃいます。

 

遷延性意識障害や高次脳機能障害の治療

遷延性意識障害や、重篤な高次脳機能障害の被害者の方は、常時全面的に介護必要とすることが少なくありません。

したがって、適正な後遺障害等級が認定されない場合や、適正な後遺障害等級が認定されたにもかかわらず、加害者から十分な補償を受けられない場合には、ご家族に非常に大きな負担が生じることも考えられます。

もし、ご家族やお知り合いで交通事故にお会いになった方で、遷延性意識障害や高次脳機能障害といった後遺障害でお悩みの方がいらっしゃる場合には、早目に、専門知識を有する法律事務所に相談することをお勧め致します。

 

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江畑  博之

江畑  博之

昭和56年新潟県燕市生まれ。平成14年新潟大学工学部化学システム工学科へ入学。卒業後、平成18年東北大学法科大学院入学する。司法試験に合格後は最高裁判所司法研修所へ入所し弁護士登録後、当事務所へ入所する。交通事故被害者が適切な賠償額を得られるよう日々、尽力している。
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