鼻の後遺障害について

交通事故による鼻に怪我を負い、後遺障害となってしまうケースがあります。鼻の後遺障害は大きく2つに分けることができます。

欠損障害

鼻の欠損とは、耳軟骨部の全部または大部分の欠損を意味します。
後述するように、鼻の欠損は外貌の醜状でも判断することが可能です。

機能障害

機能障害とは、嗅覚の脱失・減退または鼻呼吸が困難になることを意味します。

なお、後遺障害等級9級5号の「機能に著しい障害を残すもの」とは、嗅覚脱失または鼻呼吸困難を意味します。

 

鼻の後遺障害の認定基準

等級 認定基準
9級5号 鼻を欠損し、その機能に著しい障害を残すもの
12級相当 嗅覚を脱失または鼻呼吸困難が存するもの
14級相当 嗅覚の減退するもの

①鼻の後遺障害の等級認定のポイント

鼻の後遺障害のうち、嗅覚の脱失・減退は、T&Tオルファクトメーターの検査結果によって証明します。

この検査は、5種類のにおいについて、それぞれ8段階の濃度(-2~5)が設定されており、これを所定の順番でにおいを嗅いでいき、初めてにおいを感じたときの濃度を記録します(検査閾値)。

その後は、更に強いにおいをかがせて、それば何のにおいか、またはどんな感じのにおいが判断できるまで、濃度を強くしていきます。検査者が正しい答えをした時のにおいの種類と濃度を記録します(認知閾値)。もっとも強い5の濃度のにおいが認知できない場合には、6となります。

以上の検査が終わりましたら、5種類の認知閾値の平均値を計算します。

この値が2.6~5.5の場合には「嗅覚減退」、5.6以上の場合には「嗅覚脱失」と判断されます。

②鼻の欠損と外貌の醜状との関係について

上述したとおり、鼻の欠損とは、「耳軟骨部の全部または大部分の欠損」を意味しますが、この場合には、「外貌の著しい醜状障害」(7級12号)の後遺障害に該当します。

欠損の9級5号と醜状障害の7級12号との関係ですが、労災における認定基準では、「鼻を欠損し、その機能に著しい障害を残す場合は、鼻の障害としては第9級の5に該当するが、一方、外貌の醜状障害として第7級の12に該当するので、この場合は、第7級の12に認定する。」とあり、自賠責保険においても同様に判断されておりますので、上位等級である7級12号のみが認定されることになります。

なお、後遺障害でいう「鼻の欠損」とは評価できないものの、鼻に瘢痕や線状痕等がある場合には、他の顔面の瘢痕等と併せて評価し、「外貌に醜状を残すもの」に該当する場合には12級14号、「外貌に相当程度の醜状を残すもの」に該当する場合には、9級16号の後遺障害が認定されます。

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江畑  博之

江畑  博之

昭和56年新潟県燕市生まれ。平成14年新潟大学工学部化学システム工学科へ入学。卒業後、平成18年東北大学法科大学院入学する。司法試験に合格後は最高裁判所司法研修所へ入所し弁護士登録後、当事務所へ入所する。交通事故被害者が適切な賠償額を得られるよう日々、尽力している。
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