雪道の交通事故における過失割合① 弁護士 江畑 博之
過失割合とは
交通事故における過失割合とは、事故当事者が負う責任の割合を指します。
事故の態様によっては、加害者が100%悪いとまで言えないものもあります。そのような時に、被害者と加害者、それぞれにどのくらいの割合で責任があるのかを表したものが過失割合です。
過失割合は、過去の裁判例などを踏まえて、事故類型ごとの基本となる過失割合があります。
そこで、交通事故が起きた場合には、どの事故類型に当たるのかを確認した上で、その基本となる過失割合を確認します。
その後、基本となる過失割合を修正すべき事情(双方の道路の幅員の比較、速度違反など)があれば過失割合を修正した上で、最終的な過失割合を算定します。
雪道における交通事故
新潟県のような積雪が多い地域では、雪道特有の事故が生じることがあります。
例えば、凍結している道路でのスリップ事故などです。
このような雪道特有の事故が生じた場合、過失割合に影響はあるのでしょうか。
道路脇に積み上げられた雪山による見通しの阻害
道路脇に積み上げられた雪山により、道路状況の見通しが阻害されることがあります。
例えば、一方の道路に一時停止標識のある信号機のない交差点に進入する際、一時停止標識がある道路から交差点に進行する車は左右の状況を確認した上で交差点に進入する必要があります。しかし、雪山が原因で一時停止標識の位置では左右の状況が確認できない場合があります。このような場合、車は一時停止標識を超えて交差点に進入しないと左右の確認ができません。一時停止標識を超えて交差点に進入した際、左右から進行してきた車と衝突した際、過失割合はどのように評価されるのでしょうか。
このような事故が起きた場合、裁判例では、基本となる過失割合と比べて左右の道路から直進してきた車両の過失割合を重くする(大きくする)傾向にあります。その理由としては、直進している車の運転手は前方を注視して運転する義務があるところ、道路脇に雪山があり、直進している車から雪山の向こう側の見通しが悪い場合には、雪山の間から道路に進入しようとする車があることを予測すべきであり、直進している車はあらかじめ速度を低下させることで、事故を回避することが可能であるためです。
スリップ事故
雪道では、道路が凍結するなどして、車がスリップし、他の車に衝突または接触する事故(いわゆる「スリップ事故」)が多いです。
このような場合、基本となる過失割合と比べてスリップした車の方の過失を重くする裁判例が多く見受けられます。
その理由は、車を運転する者は、車を停止、制御することが可能な速度で進行する義務がありますが、車がスリップしてしまったということは、停止または制御することが可能な速度で進行していなかったことになるからとされています。
法定速度を守って運転していたとしても、雪道における運転は通常よりも慎重さが求められることから、スリップした方の過失が重くなることあります。
なお、スリップ事故のケースでは、スリップした方から「スリップは不可抗力」と主張されることがありますが、上述したように、スリップしたのは「停止または制御することが可能な速度で進行していなかった」ことが理由であるため、スリップが不可抗力だとする主張が認められることはほとんどありません。
投稿者プロフィール
- 昭和56年新潟県燕市生まれ。平成14年新潟大学工学部化学システム工学科へ入学。卒業後、平成18年東北大学法科大学院入学する。司法試験に合格後は最高裁判所司法研修所へ入所し弁護士登録後、当事務所へ入所する。交通事故被害者が適切な賠償額を得られるよう日々、尽力している。
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