肘部外側側副靱帯断裂等 治療途中で死亡したにもかかわらず手関節の機能障害で8級6号を獲得した事例

相談者 (70代男性)/職業 自営業
後遺障害内容(傷害名)・部位 手関節の機能障害
後遺障害等級 8級6号

依頼の経緯

最初のご相談は、事故を受けた本人ではなく、ご家族からの相談でした。相談者の方は、事故により肋骨骨折、腰椎多発骨折、肘部外側側副靭帯断裂、後骨間神経麻痺等の重傷を負い、リハビリを続けていましたが、リハビリ中に別の病気が発見されたため、リハビリを一旦中止し、そちらの病気の治療に専念していました。傷病の程度から、手関節に障害が残る可能性もあったことから、当事務所の方でご依頼を受け、まずは適正な後遺障害が認定されるためのサポートを行うこととしました。

当事務所の活動①(後遺障害が認定されるまで)

医療機関からカルテ等の医療記録を取り寄せる手続をしていた矢先、依頼者は事故とは関係のない病気が原因でお亡くなりになってしまいました。

通常、後遺障害の申請は、治療を相当期間継続したものの、完治しなかった場合に、医師に診断書を作成してもらった上で行います。しかし、本件の依頼者は、治療の途中で亡くなってしまったため、事故から相当期間後に後遺障害が存在して否かは不明な状況でした。

ただ、このような場合でも、事故による治療が中止されるまでの治療経過等を基に、事故から相当期間経過後の後遺障害の存否について判断できるしくみとなっております。このことを依頼者のご家族(相続人)の方に説明した上でご理解いただき、まずは、医療記録の検討から始めることにしました。

医療記録を検討したところ、依頼者は仮に相当期間治療を継続したとしても、左手関節の可動域制限が残存している可能性がありました。しかし、医療記録には、怪我を負った左手関節の可動域の数値は記録されていたものの、怪我を負っていない右手関節の可動域の数値は記録されていませんでした。

手足の関節の場合、事故によりどの程度可動域に制限が出ているのかが後遺障害を認定する基準となります。具体的には、怪我を負った側と負っていない側の可動域を計測し、その左右差がどの程度出現しているのかをもって後遺障害が判断されることになります。

しかし、本件の依頼者の場合、怪我を負った左手関節の可動域は医療記録に記録があるものの、右手関節の可動域は記録がないため、左右差がどの程度出現しているのかが分からない状態でした。そこで、当事務所の方で、依頼者の担当医に対し、怪我を負っていない右手の関節の可動域について照会をしたところ、平均的な手関節の可動域と同程度であったとの回答を得ました。当該回答が記載された書面を添付した上で、後遺障害申請を行いました。

当事務所の活動②(後遺障害認定後)

後遺障害申請の結果、関節としての機能をほとんど果たしていないという意味の8級6号の後遺障害が認定されました。

その後、加害者側の弁護士と、認定された後遺障害を前提に、損害賠償の交渉を行いました。

交渉の中では、慰謝料や逸失利益(後遺障害によって仕事が制限されることの補償)が争いになりましたが、裁判基準を前提に加害者側の弁護士と交渉を重ねました。

結果

交渉の結果、逸失利益、慰謝料とも裁判基準に近い金額で示談することができ、既払い分を含め約1290万円の損害賠償金を獲得することができました。

所感、争点(ポイント)

治療途中で亡くなった方の場合、後遺障害が認定されるにあたって必要な検査等が行われていない場合があります。

このような場合であっても、本件のように、担当医に照会をかける等することで、医療記録には記載されていないことを補充することができれば、後遺障害が認定される可能性はあります。

本件の依頼者は残念ながら解決前に亡くなってしまいましたが、依頼者のご家族の方からは、適正な後遺障害が認定され、損害賠償金も裁判基準に近い金額を獲得できたことから、大変満足して頂くことができました(担当江畑博之)。

投稿者プロフィール

江畑  博之
江畑  博之
昭和56年新潟県燕市生まれ。平成14年新潟大学工学部化学システム工学科へ入学。卒業後、平成18年東北大学法科大学院入学する。司法試験に合格後は最高裁判所司法研修所へ入所し弁護士登録後、当事務所へ入所する。交通事故被害者が適切な賠償額を得られるよう日々、尽力している。
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江畑  博之

江畑  博之

昭和56年新潟県燕市生まれ。平成14年新潟大学工学部化学システム工学科へ入学。卒業後、平成18年東北大学法科大学院入学する。司法試験に合格後は最高裁判所司法研修所へ入所し弁護士登録後、当事務所へ入所する。交通事故被害者が適切な賠償額を得られるよう日々、尽力している。

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