70代男性 第7級5号「同一系列」が争点となった事例

1 ご依頼の経緯

横断歩道を歩行中に、直進してきた車両に衝突され、骨盤骨骨折や尿道損傷等の重傷を負ったという事故でした。被害者のご家族が弊事務所のホームページをご覧になり、ご依頼いただきました。

2 弊事務所の活動内容

後遺障害認定のサポート

被害者の方が膀胱の損傷により人口膀胱(ストーマ)を造設する手術が行われていました。そこで、担当の医師の先生にお手紙を送るなど、適切な後遺障害が認定されるよう、弊事務所で準備を行いました。

その結果、「胸腹部臓器の機能に障害を残し、簡易な労務以外の労務に服することができないもの」として、第7級5号に認定されました。

示談交渉

かかる後遺障害の認定結果をもとに損害額を計算し、加害者が加入する任意保険会社に提示をしました。

これに対し、加害者側保険会社は、通院慰謝料及び後遺障害慰謝料は、裁判基準(赤本基準)の80%でなければ支払いに応じない、との回答をだしました。
当方は、赤本基準でなければ和解に応じないと再度返答しました。しかし、加害者側保険会社は頑なに裁判基準での和解に応じなかったため、依頼者家族と協議の上、訴訟提起することにしました。

訴訟遂行

一般的に、交通事故による人身傷害の損害賠償請求をする場合、医療記録の開示を行います(加害者〔保険会社〕の弁護士が文書送付嘱託により裁判所を通じて開示を求めるのが通例です)。
この医療記録から、依頼者が過去に胃を全摘出していることが判明しました。そのため、加害者(保険会社)側代理人は、依頼者の後遺障害は膀胱(尿道)の損傷であるところ、これは胃の切除という障害と「同一系列」にあるとして、加重障害の反論をしてきたのです。
「加重障害」については別の記事で解説しますが、要するに、事故前に後遺障害があったがゆえに交通事故による症状が重くなったのであるから、本件事故により加害者が負担する賠償額は低くされるべきだ、という主張です。

実は、この「同一系列」に該当するかどうかという点は、ほとんど判例がありません。下級審レベルでさいたま地方裁判所平成27年3月20日判決(同事件の高裁判決も出ました)がありますが、同判決は「『同一の部位』とは、損害と一体的に評価されるべき身体の類型的な部位をいう」と述べるにとどまり、本件後遺障害にも用いることができるような内容なのか定かではありませんでした。

とはいえ、自賠責の基準によれば、同じ胸腹部の臓器であることは間違いなく、何も反論をしなければ、加害者側の主張が通ってしまうおそれがありますので、上記さいたま地裁判決をもとに反論を展開しました。また、医学書等を証拠の文献として提出するなどして、裁判官に胃と膀胱の機能の違い等を理解してもらうよう努めました。

その結果、裁判所から和解勧告があり、当方の請求額をほぼ認容する内容での和解により訴訟が終結しました。

3 担当弁護士の所感

判例がほとんど存在しない分野での戦いになりましたが、結果的に裁判官にこちらの考えを理解してもらうことができ、とてもホッとしています。また、上記ではかなり簡略化してご紹介しましたが、実務上、加重障害に関する判例がとても少ないという状況は、とても驚いたというのが率直な感想です(担当弁護士五十嵐勇)。

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